ピカールの思い出

中学校の頃、自分で0からスプーンを手作りしよう、みたいな授業を受けた。一枚の金属の板を渡されて、まずは糸鋸か何かでしゃもじ型に切り出し、金槌で叩いてスプーンのすくう部分の凹みを作る。これでスプーンの形状はできるのだが、表面が汚いのでその後にやすりで磨くという工程があった。このやすりがけがめちゃくちゃ大変で、最初は金属のやすりで角をとる程度に磨き、そこから粗めの紙やすり→中くらいの粗さの紙やすり→細かい紙やすり...みたいな感じで永遠にやすり続けて表面を綺麗にしていく。一生分とも思えるやすりがけの結果、みんなのスプーンの表面の綺麗さにはそれなりの差が出ていたと思う。やはり、やすりがけの丁寧さとか回数で綺麗さが変わってくるんだな...と思い、俺のスプーンは平均よりは綺麗だったので満足した記憶がある。

ここで突然、「ピカール」という謎の薬品が登場した。先生が、やすりがけしたスプーンをピカールをつけて磨こうみたいなことを言い出す。そうですか...と思いながらピカールでスプーンを磨くと、表面がめちゃくちゃに綺麗になる。ピカール最高か?みたいなことを周りの人と話しながら磨いていると、どんどんみんなのスプーンがぴかぴかになっていく。そして...驚いたことに、ピカール前は差があったみんなのスプーンの綺麗さが、ピカールによって完全に一様になっているのである。まじで、ピカールがあればそれまでのやすりの努力とか関係ないやないか...と思って悲しみにくれた。人生にもピカールがあってほしい。

ピカール 金属磨き 300g

ピカール 金属磨き 300g